子どもの目を守る
近年、新型コロナウイルス感染症の流行により、子どもがデジタル端末を長時間使用する機会が増え、子どもの視力低下が問題視されています。
そこで、当院の眼科部長の杉田江妙子先生に話を伺いました。
子どもに多い目の病気
近視 近くは見えるが遠くが見えにくい(一般的に目が悪い状態)
遠視 近く、遠くを問わずピントが上手く合わない
乱視 角膜が楕円体になってしまいピントが合わず、位置がズレてぼやけて見える
弱視 子どもの視力が発達する途中で絶えずものを見る訓練ができず、視力の発達が抑えられ止まってしまう
斜視 片方の目が本来向くべき方向とは違う方を向いている状態
picup➀弱視
【弱視を引き起こす原因】
・遠視が強い ・屈折の左右差が強い
・乱視が強い ・幼少時に長時間片目に眼帯などをして隠してしまっていた
・斜視がある
弱視の治療は眼鏡装用が基本的な治療法です。
picup②斜視
【内斜視】片目が内側に向いている
生後6ヶ月以内に発症する乳児内斜視、遠視による調節性内斜視、突然発症する急性内斜視などがあります。乳児内斜視は、同時にものを見る機能を発達させるためにはできるだけ早めに手術を行う必要があります。調節性内斜視は、眼鏡装用により良好な両眼視機能が育つことが多いです。急性内斜視は、ある時から急に内斜視になり物が二つに見える複視を訴えるようになります。最初のうちは長い時間近くを見た後に遠くを見ると複視があっても時間と共に治っていたものが、遠くを見るだけではなく近くを見ても常に複視を自覚するようになります。
【外斜視】片目が外側に向いている
間欠性外斜視、恒常性外斜視があります。9割は間欠性外斜視で、真っ直ぐな時もあればどちらかの目が外にずれている時もある斜視です。最初のうちは二重に見えていることを自覚しますが、徐々に外にずれている目で見ているものを脳が抑制をかけて消してしまい、二重に見えていることを自覚しなくなります。そのため両目で同時にものを見る、立体的に見る働きが損なわれてしまいます。
【上下斜視】片目が上もしくは下に向いている
多くは先天性上斜筋麻痺で、頭を傾けてみると複視を解消できる斜視です。常に頭を傾けた状態でいると顔の歪みが生じるため早期に手術が必要です。
斜視は片目が異なる方向を見ている状態で、どの方向を向いているかによって斜視の種類が決まります。
斜視の治療法
急性内斜視は脳の病気が原因のことも稀にありますので、頭部のMRIやCTで精査を行います。近くで見る距離を離すようにしたり時間を制限することで1割~3割の方は治る場合があります。治らない場合の治療法は3種類あります。プリズム眼鏡という光を曲げて目の中に入れる眼鏡を使って複視を解消する方法、12歳以上であればボトックスという筋肉を麻痺させる注射を内側に向かせる筋肉に注射する方法、そして筋肉を移動させて治療する手術方法です。
間欠性外斜視は7歳~12歳までのある程度小さい斜視の角度の子どもであればトレーニングをする方法があります。しかし、斜視の頻度が高く角度が大きい場合は手術が必要となります。
先天性上斜筋麻痺は手術が基本的な治療法です。
多くの場合、環境が影響している
新型コロナウイルス感染症の流行により、家庭内で過ごす時間が増え、スマホを見たり携帯ゲームで遊ぶ時間が増え、近視の子どもが増えています。近視は成人したときに緑内障、近視性黄斑症、網膜剥離などの病気になりやすくなります。緑内障には4倍なりやすくなります。
近視は遺伝的なものもありますが環境が影響して近くを見る時間が長くなるとなりやすくなります。
目を大切にする生活
子どもの視力の発達は1歳半でピークを迎え、6歳~8歳で完了するという特徴があり、3歳児検診で弱視や斜視を発見し適切な治療をしていくことが大切です。家庭では片目を閉じて見ていたり、目を細めて見たり、横目使いや上目使い、あごを挙げてみる状態、眩しがったりよく目を擦ったりしていないかを観察しましょう。検診で異常が発見されたらまずは適切な度数の眼鏡装用を行います。
日常生活では近くを見るときに30cmは離して見ること、30分近くを見たら20秒以上は遠くを見て目を休めることが重要です。できれば5分間は目を休めることが理想です。
また、近視の進行を遅らせるために屋外活動が推奨されています。1日のうち2時間太陽の下で過ごすことが良いとされています。