日本の5大疾病の一つ「糖尿病」

日本の5大疾病の一つ「糖尿病」。食生活や生活習慣だけでなく遺伝的な要因もあり、正しい理解が大切です。
                              糖尿病・内分泌代謝内科医長 吉岡 佑紀


“糖尿病”とは


 血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が高い状態が続いている病気で、高血糖が続くと全身に様々な合併症を引き起こします。糖尿病には4種類あります。

①1型糖尿病
 何らかの原因でインスリンを分泌する細胞(膵臓のβ細胞)が破壊され、インスリンが出なくなる。
②2型糖尿病 最も多い糖尿病のタイプ
 生活習慣、加齢、家族歴(糖尿病になりやすい体質)など様々な要素が複合して発症。インスリンの作用が不足する。
③その他の特定の機序・疾患によるもの
 内分泌疾患(ホルモンの病気)やステロイドの長期使用(主に内服)、遺伝子異常など様々な原因によって発症。
④妊娠糖尿病
 妊娠中に初めて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常。糖尿病ほど血糖値は高くないが、妊娠中においては血糖値が高めだと母体、胎児に悪影響があり、適切な管理が必要。

初期は自覚症状がない

 基本的に糖尿病になっても初期には自覚症状はありません。高血糖状態が長く続くと合併症による症状が出たり、喉が渇く、トイレが近くなる、体重減少などの症状が出てくるようになります。そういった症状が出て初めて病院を受診した場合は、血糖値はかなり高いことが多いです。早期発見のために健康診断や人間ドックを活用する必要があります。

糖尿病による三大合併症の“しめじ”

 細小血管合併症ともいい、神経障害・網膜症・腎症の3つがあります。体の中の細い血管に長い間高血糖による虚血、血流障害などが起こることで発症します。

し:神経障害
 手足の先を中心に痺れや痛み、自律神経障害による便秘や下痢などの排便異常、起立性低血圧(立ちくらみ)があります。
め:目の障害(網膜症)
 目の奥の血管(網膜)に虚血が起こり、眼底出血や緑内障の原因となることがあります。初期には症状が出ないので、糖尿病と診断されたら一度は眼科を受診する必要があります。
じ:腎症
 蛋白尿の増加、腎機能の低下を経て、末期には透析を導入せざるを得ないことがあります。初期には微量アルブミン尿という蛋白尿の一種が出始めて量が増加、腎機能が低下するようになりますが、この微量アルブミン尿の増加が進むと、腎機能の低下が早まるので腎症についても早期に対応する必要があります。

治療法

 2型糖尿病の治療の基本は食事・運動・薬物療法です。糖尿病は食べ過ぎ、栄養バランスの悪化や運動不足などから発症しますので、原因である食事・運動習慣の見直しから行います。
 食事については、栄養士による栄養指導が一番です。「間食していない」「食べ過ぎていない」つもりでも栄養バランスが悪い場合があるため、食事習慣の聞き取り、改善方法を栄養士と一緒に考えることが重要です。人によっては、それだけで薬がなくてもみるみる血糖値が下がることもあります。
 運動については、有酸素運動(ウォーキングや軽いジョギングなど)やレジスタンス運動(いわゆる筋トレ、スクワットなど)を組み合わせ、脂肪を燃焼し筋肉量を維持することが大事です。ただし、合併症の程度によっては運動を制限したほうが良い場合もあるため、どの程度の運動なら行っていいか主治医に相談しましょう。(網膜症の進行で眼底出血が見られる場合や蛋白尿が高度、心不全があるなど)
 薬物療法については、一般的にHbA1cが7.0%を超えた場合が数ヶ月続くと内服の開始、追加を検討します。HbA1cがかなり高い場合(例えば10%を超えているなど)や口渇、多飲多尿、体重減少などインスリンから始めることもあります。他にも近年は糖尿病治療薬の選択肢も増えてきており、インスリンではない注射薬(GLP1受容体作動薬やGIP/GLP1受容体作動薬)を使うこともできます。週に1回の自己注射製剤タイプや内服タイプなどがあり、患者さんのライフスタイルに合わせて選択します。
 1型糖尿病については、何らかの原因で膵臓からインスリンが出なくなるタイプの糖尿病のため、インスリン自己注射が必須です。一般的にはペン型の注射製剤を使用しており、お腹に打つことが多いです。当院では未採用ですが、インスリンポンプ療法といってお腹に取り付けた装置から持続的に少量ずつインスリンを皮下注射して補う方法もあります。1型糖尿病は2型糖尿病に比べて若年発症が多く、患者さんからしたらいきなり血糖測定とインスリン自己注射が必要になり家族を含め戸惑う場合も少なくありません。そういったことも治療として考えなければいけません。

糖尿病との付き合い方

 糖尿病の治療目標は、生活の質をなるべく落とさず寿命を全うすることです。糖尿病のコントロールが悪いほど合併症などで生活の質が落ちてしまいます。早期に発見、治療することが最も効果が出やすいですが、合併症がある程度進行した方も今からきちんと取り組むことで、今ある生活の質を維持していきましょう。まずは食事や運動など自分が出来ていない部分を一つずつ改善していけば長い目で見て良くなっていくと思います。検査だけして結果だけもらって行動しないのではなく、まずは一つ実践してみましょう。